スタバックス鋼の特徴
スタバックス(STAVAX)鋼は、スウェーデンのウッデホルム社がプラスチック金型用に開発したマルテンサイト系クロム合金ステンレス鋼です。「スターバックス」鋼と呼ばれる場合もあります。
ステンレス系の鋼材となるため、非ステンレス系の鋼材に比べ、優れた耐食性を備えています。機械的な特性も優れており、耐摩耗性も抜群です。プラスチック金型として利用する場合は、寿命の長い金型となってくれるでしょう。鏡面加工性にも優れます。
スタバックス鋼の切削
スタバックス鋼の成分は、鉄に13.6%のクロムとその他微量元素としてバナジウム、マンガン、シリコン、炭素が含まれています。
スタバックス鋼の硬度は、熱処理前で26〜35HRC程度ですが、焼入れ焼戻しをすることによって45〜54HRCの高い硬度を得られるのが特徴です。
低温焼戻しでは、硬度は低くなるものの高い靭性を狙え、高温焼戻しでは、高い硬度と放電加工に対する熱的安定性が望めます。そのため、用途次第での焼戻し温度の使い分けも可能です。
スタバックス鋼は、特殊溶解によって製造されているため、非金属の介在物質が少なく均一な組織を持ちます。そのため、非常に安定したシボ加工を得られます。
スタバックス鋼の主な用途
スタバックス鋼の主な用途は、プラスチックの成形金型です。
スタバックス鋼の優れた耐摩耗性は、グラスファイバーを混ぜ込んだプラスチックでも安心して利用できほど。金型の寿命も長いのが特徴です。
また、耐食性にも優れているので、腐食性のガスを出すPVCやアセテートなどの金型としてもスタバックス鋼は好んで使用されます。
耐摩耗性と耐食性の両方にすぐれるため、メンテナンス頻度が少なくて済み、大ロットの製品加工でコストパフォーマンスを重視する場合でもよく採用されます。
高い鏡面加工性から、メガネやサングラスといった光学系の製品の金型、注射器や分析容器などの医療系プラスチック部品の金型としての需要が増えているのも見逃せない点です。
スタバックス鋼の切削性
スタバックス鋼は、一般的な炭素鋼に比べると粘りや靭性が高いため、加工の難易度は上がります。
加工硬化もしやすいことから、切削加工を施すと塑性変形により内部応力が発生してしまいます。この変形は一般製品のレベルではそれほど問題になりませんが、光学系機器の部品や医療系機器の部品の精密加工では問題になる場合もあります。
スタバックス材を加工する場合は、コーティングが施された超硬合金で加工するのが無難でしょう。