スーパーインバーの特徴
スーパーインバーは、常温付近での熱膨張率が極めて小さい合金です。
スーパーインバーの「インバー」には「Invariable Steel(変形しない鉄)」という意味があり、1897年にスーパーインバーの元となる「インバー」が発見されました。
インバーが、鉄63.5、ニッケル36.5%、微量元素としてマンガンと炭素で構成されているのに対して、スーパーインバーは、鉄63.5%、ニッケル31.5%、コバルト5%、微量元素としてマンガンと炭素が含まれているのが特徴です。
インバーの熱膨張率は鉄の10分の1程度ですが、スーパーインバーはさらに熱膨張率が低く、インバーの10分の1となっており、鉄よりも100分の1程度の熱膨張率しかありません。
スーパーインバーやインバーの熱膨張が少なさは、磁気歪みと熱膨張が常温付近で相殺し合うことが要因です。ただし、温度域が大きく外れるとバランスが崩れてしまい、熱膨張率は高くなってしまいますので注意が必要です。
熱膨張率の低い材質には、他にセラミックなどがあげられますが、スーパーインバーは通電性や溶接性なども備えている点で独自の強みをもっています。
スーパーインバーは「スーパーアンバー」「超不変鉄」「超不変鋼」などとも呼ばれる場合もあります。
スーパーインバーの主な用途
スーパーインバーは、常温付近での熱膨張率が低い金属です。そのため、スーパーインバーは、小さな温度変化で生じる寸法変化すらも嫌う超精密機械に使用されます。
代表的な用途では、
・時計
・工作機械部品
・光学機器部品
・測定機器部品
などがあげられます。半導体の製造装置では、基礎に使用されることもあります。
また、熱膨張率が低いことから、熱膨張率の高い金属と組み合わせるバイメタルとしても利用され、一定の温度以上になると動作するサーモスタットとして活用されています。
スーパーインバーの切削性
スーパーインバーやインバーは、一般的に難削材に分類されます。
硬度もあまり高くないスーパーインバーですが、ニッケルが多く含まれることから熱伝導率が低く、ニッケル特有の粘りも強いのが特徴です。
また、切削時に局所的に溜まった熱が常温付近よりも高くなってしまうと熱により歪んでしまう点も厄介な点といえます。
そのため、スーパーインバーの切削をする場合は、すくい角の大きい切れ味の鋭い刃物を使用し、切削時の熱を残さないように加工していくことがポイントです。
ニッケル合金などに並び、難削材とされるスーパーインバーの切削条件は、各社のノウハウとされており、なかなか表に出てこないため、細かい加工条件については自分で煮詰めていくしかないでしょう。